木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

歳月

財務省のセクハラで、思い出したのだけど、茨木のり子さんの死後、遺稿ととして出版された詩集がありましてね。

茨木さんが、こっそり書き溜めていた詩があったことは周囲の人は知っていたのですが、生前の茨木さんが
「私が生きている間は絶対本にしないでね」
と言い、遺稿を見つけた甥御さんが
「これは絶対に本にしないといけない」
と即座に出版することを決めた相聞歌。全て茨木さんを残して先に逝った夫への愛が綴られておりまして、そりゃあ自分のラブレターを本にしたがる人はいないよね、と納得してしまいました。
茨木さんは
「たくさんの男(ひと)を知りながらついに一人の異性にさえ逢えない女(ひと)も多いのに」
と詠いましたが、財務省のセクハラを見ると、これ男と女を入れ替えても通じそうですね。


 一人のひと

ひとりの男(ひと)を通して
たくさんの異性に逢いました
男のやさしさも こわさも
弱々しさも 強さも
だめさ加減や ずるさも
育ててくれた厳しい先生も
かわいい幼児も
美しさも
信じられないポカでさえ
見せるともなく全部見せて下さいました
二十五年間
見るともなく全部見てきました
なんて豊かなことだったでしょう
たくさんの男(ひと)を知りながら
ついに一人の異性にさえ逢えない女(ひと)も多いのに

 

 

歳月

歳月