木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

これ読みながら、小泉竹中改革を思い出して、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」の中で阿修羅王が叫んだ
アトランティスの実験が失敗したのは幸いだった!神の計画が成功していたら、その時点で人類は滅亡していただろう!」
という言葉を連想してしまいました。

 

新型コロナの感染拡大で欧州各国の苦闘ぶりが伝えられていますが

「イタリアは欧州連合(EU)が求めた財政緊縮策として医療費削減を進め、医療機関を減らしてきた。その結果、過去5年の間に約760の医療機関が閉鎖し、医師5万6000人、看護師5万人が不足しているという。

政府は引退した医療関係者の現場復帰を呼びかけ、軍事施設の活用など対策を急いでいる。」

www.mag2.com

というコロナウィルスに関する報道が、まんまこの本に出ている状況で、EUって、ソ連崩壊はまだしもアイスランド危機、ギリシャ危機から少しも学んでなかったんだなと思いました。

 社会保護政策を「正しく」運営すれば、財政を破綻させることはなく、むしろ経済を成長させるというのはアイスランド、マレーシアの成功から結果が出ているのですよね。

なのに、何故ロシア、タイ、ギリシャの悲劇の方を選んでしまうのか。やっぱり経済政策にもイデオロギーが出てくるのかな?

新自由主義経済政策もイデオロギーの一種だという指摘されていますものね。


これまで緊縮政策が失敗してきたのは、それがしっかりした論理やデータに基づいたものではないからである。
緊縮政策は一種の経済イデオロギーであり、小さい政府と自由市場は常に国家の介入に勝るという思い込みに基づいている。
だがそれは社会的に作り上げられた神話であり、それも、国の役割の縮小や福祉事業の民営化によって得をする立場にいる政治家に都合のいい神話である。

「緊縮財政推進派」と「社会保護主義派」大規模な経済危機が起こった時、どちらの政策を選択するか?異なった政策を選んだ国の結末を膨大なデーターを元に比較している訳ですが、大不況下でも医療制度、失業対策、住宅対策への予算を確保して国民に「大丈夫、なんとかなる」と安心感を与えた国の方が大不況を乗り切り、経済成長しているのですよね。 

これ読んだ時、そりゃ日本が「失われた30年」になるわ、と思いました。

国の役割の縮小や福祉事業の民営化によって得をする立場にいる政治家に都合のいい緊縮財政は国の経済成長を阻害させ税収を落とす、という結果の出ている政策を延々とやってきてたのだもの。

 

さすがに欧州では緊縮策の見直しが起こっているとブレイディ みかこさんが書いていたけれど、「新型コロナ、EU全域に拡大 欧州の死者500人超える」という記事が出たところを見ると見直しが少し遅かったみたいですね。