木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

社会

聞き書き 関東大震災

関東大震災から100年で出版されたのだろうけど、今あらためて読む価値はあるなあ。 「谷根千」の関東大震災特集号、運が良ければ神保町辺りで見つかることもあるだろうけど、 地域雑誌は古本屋にもあまり出回らないから、こうして書籍で読めるのは有り難いで…

9で割れ

先日、東京で原画展が開催された矢口高雄先生の銀行員時代の話が Kindle Unlimitedで読み放題になっていますね。 矢口先生の自伝自体が、今では変わってしまった当時の農村の生活の貴重な記録となっているという評価もありますが、それで言ったらこの話は昭…

退引町お騒がせ界隈

技術の断絶について色々と聞く機会がありまして。学校やアマチュアという形でも技術は伝えていけないだろうか。技術は断絶させないことが大事なんだとお聞きして、遠藤淑子さんの初期作にそういう話があったなあ、と思い出したりして。 失恋と進路決定時期が…

百姓の百の声

「農業」分野の倒産は20年間で最多ベースと伝えられておりますが、かといって私は日本の農業にも農家にも絶望しているわけではなくて、国や社会が才覚ある農家の足を引っ張らなければ何とかなるんじゃないかな、とも思っています。 www.tsr-net.co.jp この映…

アーナンド先生の教室

このツイートを見て、調べたらまだ間に合ったので見に行ってきました。 「次はどんなインド映画を見に行くの?」「受験戦争を描いた映画で階層社会なインドで貧民のための私塾を開いて難関大学に生徒を合格させまくる先生が主人公」「ふむ」「怒った他の塾が…

教育と愛国

足立区の子供達への支援が「素晴らしい!」「真っ当過ぎる」と話題になっていまして。 togetter.com togetter.com 元々、給食での食育を通して、子供達への栄養教育(アメリカの低所得者層の食生活とその結果としての過剰な肥満と成人病を見ると、これがどれ…

杜人

社会の硬直化が、どれだけ世の中を息苦しくさせるのか?ということについて考えさせられる時に、風通し、水通しをよくすることによって、土中の環境を変え、環境を蘇る人の映画を観るのも、何かまたサインのような気もしますね。横浜だと26日までだから間に…

家族と社会が壊れる時

東大の入学式での祝辞と早大の入学式での祝辞が比較されていまして。 https://www.waseda.jp/top/assets/uploads/2022/04/2204_speech_koreeda.pdf 東大の祝辞の方はかなり評判が悪いですが、河瀬監督からの祝辞だと思うとあまり違和感はないんですよね。 だ…

カティンの森

ウクライナの民間人虐殺、どうしても「カティンの森」を思い出すなあ。あれも救いがない映画でした。 www.bbc.com 橋本さんをはじめ 「国民の命を守るために早く降伏した方がいいよ」 とテレビで言っている人を見て、この人東欧史も東欧を舞台にした映画や小…

鬼子母神

山岸さんの虐待話のタイトルは「緘黙の底」だけど、収録作品集のタイトルとなっている「鬼子母神」も怖い話でしたね。 あれを読むと愛は万能でないことも、愛が人に害を与えることがあることもよく分かる。 確か河合 隼雄さんも心理療法家の立場から「昔話と…

緘黙の底

先日、子供の虐待防止対策イベントに参加して、虐待サバイバーの方のお話をお聞きしたのですが、山岸涼子さんが、代理の養護教諭が主人公で、小学生の女の子が実父に性的虐待されている話を描いていましたね。 調べたら、1992年の作品だ。この時代に、既に問…

虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか?

友達に「脈絡のない本棚だ」と言われる程度に乱読するせいか、著者の国も異なるのに「対になるようなことを書いているな」と思ったり「まったく同じことを書いているな」と思うことがたまにあります。 この二つ、続けて読むと「短所は長所、長所は短所」とい…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

今月の古事記講座をお聞きしたら、内容が濃すぎて整理する前に 「多様性ってほんと大変」 と溜息をつく中学生の話を読み返したくなったので、本棚から取り出してパラパラとめくっています。 いや、ほんと多様性について語るなら最低限この本で書かれているこ…

ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー

そういえばこの本、国家としての日本の冷たさと個人としての日本人の優しさの対比が鮮やかだったなあ。 これ、日本からの支援によるベトナム独立を夢見て、結局日本に使い捨てにされたベトナム王族の話なのだけど インド独立派のシビアな国際情勢認識と対比…

江戸っ子長さんの舶来屋一代記

こういうツイートがまとめられていまして 去年、世の中から消毒用アルコールが消えた時。自粛の大打撃で苦しかったはずの酒造業界が物凄いスピードでアルコールを生産・流通させてくれた。 今の心細さはいつ迄も続かないんだ、と助けられた事、忘れたくない…

T.E.ロレンス

外務省が 「イスラエル・パレスチナをめぐる最近の情勢に対し深刻な憂慮を表明します。暴力行為はいかなる理由によっても正当化できるものではありません」 と日本の立場としては至極真っ当な談話を発表している状況で、中山泰秀議員が防衛副大臣という役職…

浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―

戦災孤児についての記録ってほんと少ないんですよね。 石井さんが「かつて戦災孤児だった人達がご存命のうちにお聞きしないと」と焦った理由がよく分かる。 これ戦災孤児についての記録なのだけれど、同時に日本の福祉政策の姿勢や児童保護に対する姿勢も見…

津波の霊たち

これを読んだのが「英国労働者階級の反乱」を読んですぐだったので、続けて読むと「長所は短所の裏返し」「短所は長所、長所は短所」というのがよくわかるなあと思いました。 どちらもその国に長く住む異邦人が(ブレイディみかこさんの場合、特派員として滞…

同期生

エンタメ産業には少女の欲求や願望が素直に出るよね、で思い出したのですが、これ面白かったですね。何故、タイトルが「同期生」なのかというと、この3人、同時期に同雑誌デビューなんですね。 竹宮さんが「少年の名はジルベール」で書いていたけど、70年代…

尊属殺人が消えた日 

津雲むつみさんが、この事件を元にした作品を描いていたけれど、そういえばフィクションじゃない方は読んだことがないなあと思ったら、図書館に蔵書があったのでリクエストを出してみました。 今では絶版になっているルポも読めるのが図書館の有難いところで…

天、共に在り

ペシャワール会の人たちも連絡が来るまで知らなかったそうですが、内閣府の国際広報事業で日本を伝える為の一冊として英訳されたそうですね。 (「PROVIDENCE WAS WITHUS」というタイトルで12月4日に出版されています) これ内閣府が「日本を伝える為の一冊…

旅ごころはリュートに乗って: 歌がみちびく中世巡礼

今年は、これを読んでいる時にこれが起こるのかと思うことが多々ありまして。(「石井光太さんの『赤ちゃんをわが子ととして育てる方を求む』を読んでいる時に特別養子縁組をした芸人が同じように特別養子を迎えたママ友と親子パーティを開きましたというブ…

子ども虐待は、なくせる

これは、ともかく読むのに時間がかる本でした。私は本を読む速度は、そんなに遅くないと思うのですが、内容がきついとなかなか読み進まないのですよね。 だいたい虐待について丁寧に取材した本はどれもなかなか読み進められないものですが、この本はその上デ…

おじいちゃんの里帰り

FBで就職活動中の女子大生が生まれたばかりの我が子を殺してしまった事件の解説が流れてきたけれど、それを見たらこの映画のことを思い出しました。 www3.nhk.or.jp これトルコ移民の家族が「故郷に帰る」という祖父の言葉で一族全員でドイツからトルコまで…

インディアンとカジノ

アメリカの暴動が起きている時に読んでいるとアメリカの抱えている矛盾とかアメリカ社会の本音と建前とか色々見えてきて面白い。 アメリカインディアン史って単純に先住民族の歴史というだけでなく、アメリカ社会の複雑さや厄介さを映し出す鏡にもなるから凄…

知事抹殺

FBで検察官の定年延長問題で福島県の佐藤知事が逮捕された時の話が流れてきまして。 知事を起訴したのが今話題になっている黒川検事長だった、ということらしいですが、それ見たら同じ福島の大野病院事件のことを思い出しまして。 あの担当検事は、その後ど…

経済政策で人は死ぬか?: 公衆衛生学から見た不況対策

これ読みながら、小泉竹中改革を思い出して、光瀬龍の「百億の昼と千億の夜」の中で阿修羅王が叫んだ「アトランティスの実験が失敗したのは幸いだった!神の計画が成功していたら、その時点で人類は滅亡していただろう!」 という言葉を連想してしまいました…

アデライトの花

しかしTONOさんも自分が感染パニックものを連載中に現実で感染パニックが起こるとは思わなかったでしょうね。(^_^;) 1巻は病気の発生、2巻は病気の拡大だから、3巻は感染パニックが描かれるんじゃないかな?と思うけど3巻はいつ出るのだろう? これ街一番の…

三人噺 志ん生・馬生・志ん朝

今年の大河、同じ俳優が若い頃の志ん生を演じているけれど、前回の放送だと、それに加えて 志ん生の二人の息子も演じていましたね。 兄弟だけど性格も芸風も違う馬生と志ん朝と二人の真打を(志ん朝は、この時はまだ真打じゃなかったけど)、きちんと演じ分…

緋の闇

Yahoo!ニュースに野田市の虐待死事件について橘玲さんが書かれた記事が自著PRの為のポジショントークとはいえ溜息しかない酷い記事だったので、尊属殺人規定が廃止となった原因の事件を知っていても同じことを言えるか、とこちらを思い出しました。 これ初出…