木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

チェブラーシカ

横浜人形の家でのチェブラーシカ展が17日までだったのですが、緊急事態宣言のおかげで断念した人もいるかもしれませんね。

あれねえ、入り口にあったチェブラーシカの紹介文が今の世の中にあって、とても良かったのですが。

「この国には いったいどれくらいいるんだろう ひとりぼっちの人が」

チェブラーシカというキャラクターを見たことがあっても、それがなんのキャラクターでどういう物語をもっているのかまでは知らない人もいるかもしれませんね。

元々はソ連の児童文学なのですが、有名なのはそれを元にした人形アニメの方でロシアでは国民的支持を得ています。

どのくらい支持を得ているのかというと版権を手に入れて、日本人がチェブラーシカを再映画化した時に

「日本人がチェブラーシカを作る?俺たちのチェブラーシカがチョンマゲを結うっていうのか⁉︎」

 と映画館につめかけたロシア人が上映後

「俺たちのチェブラーシカが帰ってきた!」

 と拍手喝采したというエピソードに

「日本人もドラえもんをハリウッドがリメイクすると聞いたらそういう反応になるよね。わかる、わかる」

「ハリウッドなら日本人のようにオリジナルを忠実に再現したりはしないぞ」

「元作品へのリスペクトがあるって大事だよね」

 という反応が出る程度には有名な作品なわけです。

 

横浜人形の家で展示していた日本版チェブラーシカもいいのですが、私はやっぱり毛ボサボサの旧ソ連チェブラーシカの方が好きなんですね。チェブラーシカのよるべのなさがより一層でているようでね。

 

チェブラーシカの外見を見て、猿?熊?どっち?という反応をされた貴方、それは正しい。チェブラーシカは、自分が何か分からない生き物なんですね。

南から運ばれたオレンジの箱に紛れ込んでいた生き物。オレンジの箱に座らせようとしてもバッタリ箱の中に倒れてしまうから「チェブラーシカ(ばったり倒れ屋さん)」と名付けられ、自分が何か分からないから動物園でも引き取ってもらえず仕方なく電話ボックスの中で暮らしていた生き物。

旧東側世界は国による表現規制が厳しいので、比較的自由が許される子供向け作品にも分かる人にも分かる暗喩が込められたという話があるけれど、もしかしたらこれもロシア人には分かる暗喩が込められているのかな?

この自分でも自分が何かは分からない、誰からも保護をしてもらえない孤独な生き物が、動物園に通勤する同じように孤独なワニ、ゲーナと友達になり、やがてひとりぼっちの生き物達の「友達の家」を作る。

端的にいうと、こういう話なのですが、独特の哀愁があってとてもいいのですよね。

 

チェブラーシカだけでなく、旧東側世界の人形アニメは可愛くて、情緒があって好きな作品が多いのですが、やっぱりどこか孤独感や哀愁がありますね。

ひとりぼっちの女の子の手袋が子犬に変わるという「ミトン」も私が好きなのですが、あれも孤独感や哀愁が付き纏いますね。

コロナのおかげで、日本では孤独と見かけない人を警戒する動きが広まってしまったけれど、それ旧東側世界でもそうなんですよね。

 

見知らぬ人は大丈夫と分かるまで用心を心がける。うっかりと下手を打つとコロナ禍の日本では病が人を殺すかもしれない。旧東側では国家が人を殺すかもしれない。

だから自分を守るために、どうしても孤独に陥りやすくなる。

人が孤独の中に閉じ込められやすい時だからこそ、孤独に暮らす生きもの同士が互いを尊重する関係を作るアニメを見て心を和ませるのもいいかもしれませんね。

 

あとチェブラーシカは音楽がいいのよ、音楽が。青い列車は、気がつくとくちすさんでいたりしますね。

 

チェブラーシカ [DVD]

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  • 発売日: 2008/11/21
  • メディア: DVD