先日、ひょんな縁で歌会に参加したのですが、その時のご案内として
「和歌を一首作ってきてください」
までは、覚悟していたのですが
「書いた和歌は半紙を横にして筆で書くといいですよ」
の言葉に青くなりました。思わず、この本を思い出してしまいましたよ。本当に悪筆の人間にとって、文字を書くというのは覚悟のいることですよね。
だから、この本の著者の思いがよく分かる。もう、これは世の悪筆の人間は読みながらひたすら、うんうん頷いている筈だ。
作家の新井素子さんも自分の字にコンプレックスがあって
「ワープロが出た時、なんて素晴らしい!これで自分が書いた原稿を編集さんが間違わずに読んでくれるだろうか?と心配せずにすむと感激した」
というエッセイを書いていたと思ったな。(しかし作家って、わりと切実にこういう悩みを抱いている人が多いようで。手書き文字でない原稿を受け取れることで安堵したのは作家だけでなく、編集者の方もそうじゃないかな)
これ、自分の書く字にコンプレックスのある男性が
「人前で字を書くときに緊張しないようになりたい」「大人としてもっとこういい感じの字になりたい」
と綺麗な字が書けることになることを目標に右往左往するという話なのですが、その努力が全く報われていないところに涙が。
「上手い字を書きたいなんて高望みはしません。大人として恥ずかしくない字を書けるようになりたいです」
世の悪筆の人間で、この言葉に同情と共感を抱かない人間がいるでしょうか。新保さん、名編集者として有名な人なんですよねえ。そういう名編集者でも悪筆からは逃れられないのか。
「頭の良さや仕事の出来る、出来ないと字の上手い下手さは関係しない」ということを喜ぶべきか「練習したからといって字が上手くなるとは限らない」ということを悲しむべきか判断に迷う本ですね。
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