木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

ホテル ルワンダ

ルワンダ虐殺から25年ということで現地での式典の様子がニュースで流れていたのですが

ルワンダ虐殺はラジオが人々を扇動したことによって起こりました。フェイクニュースが人々のヘイトクライムを煽りたてる昨今、ルワンダの虐殺が訴える危険は更に大きなものとなっています」

 との言葉に、だから朝のニュースで流したのかと思いました。

 

ルワンダの虐殺、映画になる前どれくらいニュースで流れたのかしたら?

 

映画冒頭でフツ族の主人公のところにツチ族の義兄がやって来て

「ラジオがツチ族の殺害を呼びかけている。妹と一緒に君も逃げよう」

 と、言った時主人公は一笑するのですよね。

「やだなあ、お義兄さん。ラジオがバカなことを呼びかけるなんて今さらじゃないですか。いくらなんでも、そんなこと起こるわけないじゃないですか」

そうやって笑いとばすくらい有り得ない話だったのですね。フツ族ツチ族を殺すなんて。昨日までの隣人がナタと銃を持って襲ってくるなんて。

 

そのあり得ないことが起こり、ホテルの支配人である主人公は家族とホテルに逃げ込んできた人々を守る為に虐殺の嵐に立ち向かわなければならなくなるわけです。

 

ホテルの中で助けを待ちわびる人々がツチ族だけではなかった間はまだいい。欧米人の宿泊客がいる間は、かろうじてホテルの敷地内は安全だった。

 

けれど現地人以外を対象として救助部隊はがあらわれ、盾となっていた欧米人がいなくなることで状況は変わってしまうのです。

 

ホテルの滞在客を傷つけたら欧州各国は黙っていないでしょうが、ホテルに逃げ込んできたツチ族の人々が殺されても欧州各国政府は何もしない。

 

ジャーナリストも国連軍も自分達を見捨てて去った。その中でどうやって家族と残された人々を守るのか。

ペシャワール会の中村先生が以前講演の中で

「私は組織の力を信じません。組織の中にいる人の良心を信じます」

と語っていたけれど、見捨てられた後の主人公の行動がまさにこういう感じで(もっとも主人公は信じたわけではなく、彼にとって武器となるものがそれしかなかったからでしょうけど)やっぱり人間って

「誰か助けて!」

 という悲鳴には耳を塞ぐけれど、自分を名指しした悲鳴は無視することが出来ないのですね。

 

組織の中にいる人は、時として組織の論理を優先しなければならない時もあるけれど、個人の倫理が消える訳ではないですものね。

 

これ何も知らない人がサスペンス映画として観ても面白いのですよね。そういう人がこれは実話で、主人公は実在の人物だと知った時ショックを受けそうな映画ですね。