木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

2021-01-01から1年間の記事一覧

魔群の通過

そういえば「多様性を認めないと戦争になる 多様性には闇がある」は、この本でもよく現れてますね。 フランス革命の恐怖政治もそうだけど「自分達は正しい!間違っているのはあちらだ!」を妥協しないでやると、結局は血と血で争うだけになって、何の実りも…

鬼子母神

山岸さんの虐待話のタイトルは「緘黙の底」だけど、収録作品集のタイトルとなっている「鬼子母神」も怖い話でしたね。 あれを読むと愛は万能でないことも、愛が人に害を与えることがあることもよく分かる。 確か河合 隼雄さんも心理療法家の立場から「昔話と…

緘黙の底

先日、子供の虐待防止対策イベントに参加して、虐待サバイバーの方のお話をお聞きしたのですが、山岸涼子さんが、代理の養護教諭が主人公で、小学生の女の子が実父に性的虐待されている話を描いていましたね。 調べたら、1992年の作品だ。この時代に、既に問…

虐待された少年はなぜ、事件を起こしたのか?

友達に「脈絡のない本棚だ」と言われる程度に乱読するせいか、著者の国も異なるのに「対になるようなことを書いているな」と思ったり「まったく同じことを書いているな」と思うことがたまにあります。 この二つ、続けて読むと「短所は長所、長所は短所」とい…

壬申の乱は三角関係のもつれで起きたのではありません。

「天智天皇・天武天皇・額田王は三角関係ではない」という記事が流れてきまして。 三角関係の恨みから天武天皇が壬申の乱を起こしたという説の否定記事だったのですが、え?そんなアホな話を信じている人がいるの?ストーリーに恋愛が欠かせない少女マンガで…

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

今月の古事記講座をお聞きしたら、内容が濃すぎて整理する前に 「多様性ってほんと大変」 と溜息をつく中学生の話を読み返したくなったので、本棚から取り出してパラパラとめくっています。 いや、ほんと多様性について語るなら最低限この本で書かれているこ…

嘘さえも本当にするほどの寂しさ

山本文緒さんの上手さといえば、「眠れるラプンツェル」の主人公が言われた言葉で、彼女が何故そんな行動を取ってしまったのか分かる辺り本当に小説が上手い人だったなあ。 確か、彼女が13歳の少年とも、その義父とも関係を持っていることを知っている相手か…

山本文緒さん亡くなる

山本文緒さん、亡くなりましたね。ファンというほど読んでいないけれど、面白い小説を書く人だったのに。 「恋愛小説の名手」と評されるだけのことはあって、この方が書くとどんなアンモラルな設定でも、細やかな感情描写の上手さで、納得感のある品のいい話…

ウォーターシップ・ダウンのウサギたち

アーサーランサムもいいけど神山先生の訃報に対して、誰かにお薦めしたいならこれかなあ。これ新装版出ていたんですね。 イギリスの片田舎に棲むウサギ達の物語というとピーターラビットを連想するけれど、ああいう牧歌的な話ではなくて(ああ活劇としてハラ…

戦艦大和講義 私たちにとって太平洋戦争とは何か

大和といえば日本人、戦艦大和大好きですよね。宇宙戦艦ヤマトだって企画の段階では戦艦三笠のイメージだったのが、途中で戦艦長門に寄っていき、結局最後はヤマトになったわけで巨大戦艦時代の終焉を告げる船として、その悲劇とともに人気があるのかな?と…

生きろ 島田叡-戦中最後の沖縄県知事

戦中最後の沖縄県知事のドキュメンタリー、再演されますね。 私が観たのはジャックアンドベティだったのですが、14日から27日までシネマリンで再上映かあ。しかも15日には佐古監督の舞台挨拶があるんですね。お盆じゃなかったら行きたかったなあ。 シネマリ…

三原順の言葉を考える

「コロナさえなければ札幌まで行ったのに!」 という嘆きの声もちらほら聞こえる「没後25年 三原順の世界展」ですが、いよいよ15日までですね。札幌近郊の人達は繰り返し行けるからいいなあ。 図録は通販しているけれど、三原さんのお友達が持ってきてくださ…

物語のもつ力

そういえば氷室冴子と荻原規子は、どれだけ日本の少女達に「古事記、素敵もっと知りたい!」と思わせたんでしょう。 古事記 田辺聖子の (わたしの古典シリーズ) (集英社文庫) 作者:田辺 聖子 集英社 Amazon ヤマトタケル 歴史ファンタジー (コバルト文庫) 作…

ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー

そういえばこの本、国家としての日本の冷たさと個人としての日本人の優しさの対比が鮮やかだったなあ。 これ、日本からの支援によるベトナム独立を夢見て、結局日本に使い捨てにされたベトナム王族の話なのだけど インド独立派のシビアな国際情勢認識と対比…

江戸っ子長さんの舶来屋一代記

こういうツイートがまとめられていまして 去年、世の中から消毒用アルコールが消えた時。自粛の大打撃で苦しかったはずの酒造業界が物凄いスピードでアルコールを生産・流通させてくれた。 今の心細さはいつ迄も続かないんだ、と助けられた事、忘れたくない…

ドキュメント 沖縄戦

一週間限定でリバイバル上映をするので、「ドキュメント沖縄戦」を観てきました。少し前に「生きろ」という戦中最後の沖縄県知事のドキュメンタリーを観たので、あちらを観たなら、こちらも観ないととなあと思って観たのですが、いやあ辛かったですね。 何が…

T.E.ロレンス

外務省が 「イスラエル・パレスチナをめぐる最近の情勢に対し深刻な憂慮を表明します。暴力行為はいかなる理由によっても正当化できるものではありません」 と日本の立場としては至極真っ当な談話を発表している状況で、中山泰秀議員が防衛副大臣という役職…

人の子にとっての永遠

萩尾さんの本の木原さんがとても木原さんらしくて素敵だったので思い出したのだけど 鬼滅の刃の作者さん、絶対に家にあるお母さんがおばさん(年代からいって、おばあさんまではいかないと思うけれど)の蔵書を読んで育ちましたよね。 鬼滅の刃を読む前に 「…

扉はひらく いくたびも

「少年の名はジルベール」と比べると日経の「私の履歴書」っぽいですね。 どちらも新聞記者が取材者が語るキャリアストーリーを記事にするという形式だから似ているのかな? 本としては青春談としても読める「少年の名はジルベール」の方が面白かったです。 …

夢幻花伝

香道というものが、触れたのはつい最近だけど、香道というものが世の中にあると知ったのは、小学生の時です。まだ鬼夜叉と呼ばれていた少年時代の世阿弥が香を当てようとして外して 「猿楽者には、わからんか」 と蔑まれ、嫌がらせに耐えながら必死になって…

字が汚い!

先日、ひょんな縁で歌会に参加したのですが、その時のご案内として 「和歌を一首作ってきてください」 までは、覚悟していたのですが 「書いた和歌は半紙を横にして筆で書くといいですよ」 の言葉に青くなりました。思わず、この本を思い出してしまいました…

浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―

戦災孤児についての記録ってほんと少ないんですよね。 石井さんが「かつて戦災孤児だった人達がご存命のうちにお聞きしないと」と焦った理由がよく分かる。 これ戦災孤児についての記録なのだけれど、同時に日本の福祉政策の姿勢や児童保護に対する姿勢も見…

夜の木の下で

教育虐待が原因で親を殺してしまった人のニュースが流れておりまして。 this.kiji.is それを見たら、この中に収録されている「リターンマッチ」を思い出しました。 「リターン・マッチ」元は1997年に発刊された「いじめの時間」といういじめをテーマにした小…

津波の霊たち

これを読んだのが「英国労働者階級の反乱」を読んですぐだったので、続けて読むと「長所は短所の裏返し」「短所は長所、長所は短所」というのがよくわかるなあと思いました。 どちらもその国に長く住む異邦人が(ブレイディみかこさんの場合、特派員として滞…

お父さん、チビがいなくなりました

西さんといえば「お父さん、チビがいなくなりました」が映画化された時、主演の倍賞千恵子さんが 「この歳でラブロマンスの主演が出来たのが嬉しかった」 と、インタビューで語ってまして。あれがなんか良かったなあ。確かに日本の映画で倍賞さん世代の方が…

双子座の女

ペシャワール会の中村先生の告別式のニュースが流れまして。 中村先生の息子さんの答辞を読まれでいる姿を見て 「中村先生も息子さんも理想的な九州男児なのだろうけど、『男とは、こうあるべきだ』という文化の強い土地で、理想的な九州男児になれない人は…

フィメールの逸話

そういえば古い少女マンガで、事故死した少年の魂が自殺した少女の体に入って(少女の魂は生を拒絶していたので、まだ息のある体は器が空になっている状態だった)、少女として生き返るという設定の作品がありましたね。 少女の体に入った少年は、生前同級生…

同期生

エンタメ産業には少女の欲求や願望が素直に出るよね、で思い出したのですが、これ面白かったですね。何故、タイトルが「同期生」なのかというと、この3人、同時期に同雑誌デビューなんですね。 竹宮さんが「少年の名はジルベール」で書いていたけど、70年代…

尊属殺人が消えた日 

津雲むつみさんが、この事件を元にした作品を描いていたけれど、そういえばフィクションじゃない方は読んだことがないなあと思ったら、図書館に蔵書があったのでリクエストを出してみました。 今では絶版になっているルポも読めるのが図書館の有難いところで…

チェブラーシカ

横浜人形の家でのチェブラーシカ展が17日までだったのですが、緊急事態宣言のおかげで断念した人もいるかもしれませんね。 あれねえ、入り口にあったチェブラーシカの紹介文が今の世の中にあって、とても良かったのですが。 「この国には いったいどれくらい…