木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

扉はひらく いくたびも

「少年の名はジルベール」と比べると日経の「私の履歴書」っぽいですね。

どちらも新聞記者が取材者が語るキャリアストーリーを記事にするという形式だから似ているのかな?

 本としては青春談としても読める「少年の名はジルベール」の方が面白かったです。

あちらの方が表現者として、どうマンガと向き合ったのかという苦闘と苦悩が描かれているからかな?

 こちらは「そういう日々もありました」という感じなので、そういうところも「私の履歴書」っぽいですね。

 

 読んでいると元々表現者よりも教育者に向いている人なのかな?という感じがしますね。だから大学への転身も納得。

 大学の授業についての説明も表現者としての漫画家の育成よりも、職業人としての漫画家の育成に力を入れているのかな?という感じがするし。

まあ、人間食べていかないと生きていけないから、「マンガを描いて食べていく」を目的にして学生を育成するのなら、その方が誠実かなあ。

 誰もが、誰も高橋留美子萩尾望都になれるわけではないし、表現者として食べていくことは難しくても職業マンガ描きとして食べていく術を身につけていれば、生業にしていくことができるし。

マンガで読むビジネス書も流行っているから、そういう層への需要はありますものね。

それを考えると、この本が読売系列の中央公論社から出ていることは納得。

教育者、ビジネスマンとしての竹宮さんは結構優秀な人なんじゃないのかな。

 学部経営の腕を買われて学長になったくらいだし、マンガをビジネスとして捉えて、どうマンガビジネスを伸ばしていくのか?という視点からマンガのことを語る才能はあると思う。

 文化としてのマンガに興味がない人にマンガのことを語るのは、この視点から語るのが有効ですものね。

 個人的に一番面白かったのは、陸軍中野学校の卒業生だったお父さまの話かな。このあたりは歴史秘話としてつついたら面白そうな話が出てきそうだけど、情報将校は口が堅いから難しいかな。

 ご葬儀のくだりで、戦争が遠い日々となっても、かつての情報将校達の結束の固さが変わらないことがにじみ出ているので、この人達は戦後どのような日々を送ったのかが興味ぶかかったです。