木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

浮浪児1945-―戦争が生んだ子供たち―

戦災孤児についての記録ってほんと少ないんですよね。

石井さんが「かつて戦災孤児だった人達がご存命のうちにお聞きしないと」と焦った理由がよく分かる。

これ戦災孤児についての記録なのだけれど、同時に日本の福祉政策の姿勢や児童保護に対する姿勢も見えたりしますね。

システムの不備を現場の良心に甘えて補わせるという姿勢が戦後一貫して変わらないということが凄いなあ。

石井さん、戦災孤児について興味を持ったのって児童虐待や貧困からの関連だろうけど日本の児童福祉関係者の間ではこの戦災孤児闇市世代が黄金の時代と言われているあたりが闇が深いですよねえ。

まあ、戦災で親を亡くすまでは周囲の大人に愛され守られ自尊心や自己肯定感を育ててきた世代と幼少時から虐待を受けて自分を否定する言葉しか与えられてこなかった世代では世の中を渡る力の強さが異なって当然でしょうね。

そういえば3月31日まで世田谷文学館で「あしたのジョー」展をやっているそうだけど、矢吹ジョーもたぶん戦災孤児ですよね。

ちばてつやさんが当時住んでいた場所でよく見かけた戦災孤児を思い出して彼らを励ますつもりで描いたと語っているのをどこかで読んだ気がするなあ。

ちばさんも大陸からの引き揚げで、よく一緒に遊んだ友達が引き揚げ船の中で亡くなったことをマンガにしているから戦災孤児達に対して、自分は運よくそうならなかっただけという意識があるのでしょうね。