木曜日の本棚

本と本に関することの記録です。

公爵の日

ハロウィンの「一年に一度お菓子をもらえる日」で連想したのですが、「公爵の日」はいい話でしたね。

カルバニアという架空の王国を舞台にした物語の中の一つ
「このあたりの子供達はみんなカイルの誕生日を知っている」
 から始まる話。
「もうすぐカイルの誕生日だね」
「今年でカイルはいくつ?」
「カイル、年より老けて見えるね」
と言いあう子供達に年かさの子供が
「カイル様って言えよ。立派な方なんだぞ、カイル様は。国王様の次くらいにえらいこの国の大貴族なんだからな」
とお説教する。 


タンタロット公爵は自分の誕生日になると汚い下町にやってきて下町の子供達にお菓子を生誕の施しとしてお菓子を配る。


大人達は、そのことに感謝するどころか
「あの男がうちの娘を愛人にしてくれないかしら?」
「あいつさらって金をとれないかな?」
と言うようなものばかり。
大人がもらったお菓子を取り上げて小金に替えようとしても配られたお菓子には公爵家の紋章が入っているので、
「これは買えないよ。公爵家のものだから取り扱ったらひどい目にあう。子供に食わせてあげなさい」
 と買取を拒否されたので、子供達はもらったお菓子を食べることができる。


ある年、公爵の子供が一緒にやってきて言う。
「父上、ここは公爵領ですか?」
「いや、違うよ」
「よかった、こんなところがうちの領地だったら大恥ですね。
臭いし、汚いし、昼間から酔っ払っているし。ぼんやりしているくらいだったら、どうして道路のゴミくらい片づけないんでしょうか。
ここはまるでなまけものの街ですね。父上、私はこんなところ大嫌いです。 どうしてこんなところに来るんですか?」
 公爵は、子供をぶっ叩いた後危険が起きた時の為に犬達が待機しているほろ車の中につっこみ、それから下町の子供達を集めて言った。


「どうして私が毎年“生誕の施し〟をするか。お菓子を持ってここに来るか、わかるかい?
毎年決まった日にお菓子をもらえれば君達は思うだろう。
『来年も元気でいてこのお菓子が食べたい』って。」


「そして君達が私の誕生日のたびに美味しいお菓子が食べられるなら、君たちは思うだろう。
『来年も私が元気で誕生日を迎えられますように』って。
これって、どっちにとってもいい話だろ⁈ 私にとっても君達にとっても…だから私は毎年ここに来るんだよ」


それを聞いていた子供の一人が思う。
「だけど、そんなのもっと別の場所でだってすればいいじゃないか。あの息子の言う通り、なにもお貴族様がこんな汚くて、危険な場所に来なくても……
あの人本気で俺たちの相手をしてくれていたんだな、ずっと…」


「いつかどうせ大人になるのなら、うちの親みたいろくでなしの大人でなくああいう大人になりたい」
 この後は、そう思った子供が起こした行動についての話が続くのですが、タンタロット公爵がでてくる話っていい話が多いですね。
ほんとエキューパパ政治家として有能。\( ˆoˆ )/


「あの子が生まれた時、みんなため息をついた。
私の妻が、私の最愛の妻が命をかけて生んだ娘に対して
『なんだ、女か』
とため息をついた。それから私はずっと闘ってきました。こんなおかしな世の中を変える為です」
 王国の重鎮として活躍し、初の女王の即位を支援し、成長した娘が反対意見を退けて公爵位に相応しい能力のある人間だと示せるよう道を整える。
(自分が、まだまだ現役でいられる年に引退して、うるさい親戚や公爵領内の領主達の支持を娘が自力で勝ち取るまで、爵位継承に関して沈黙を守るところ老獪さも素敵。( ´ ▽ ` ))


やっぱり政治家って、これぐらい長いタームでものごとを考えられないとダメなのでしょうね。

 

 

カルバニア物語(10) (Charaコミックス)

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